誘惑HONEY
「どう?頑張ってる?」
やっとの思いでナオを説得して、帰らせて。
元いた会議室に戻って、頼まれていた資料作りを再開した。
そんな俺のところにやってきたのは…
「サチ姉…」
よく知った顔、だった。
「こらこら。ここではちゃんと“藤枝先生”と呼びなさい。」
まるで生徒に注意するみたいな口振りで言うと、そのままツカツカと歩み寄ってきて。
「ハイ、差し入れ。」
俺の前に、缶ジュースを差し出した。
無難な缶“コーヒー”じゃないあたりがさすが。俺の好みをよくわかってる。
「さんきゅー」
ありがたく受け取ろうと手を伸ばした…のに。
「“ありがとうございます”でしょ?」
その手をバシッと叩かれてしまった。…ちっ。
「まったく。全然なってないわね。
いくら身内とは言え、公私混同は厳禁!ちゃんと“先輩教師”として敬ってちょうだい」
びしっと言われて…
「…ハイ。以後、気をつけます。」
俺は縮こまるしかない。
……なんか俺、さっきナオに言ったのと同じこと言われてないか?