誘惑HONEY



「別にぃ」


バッと顔を上げて、私の顔を覗き込もうとする龍ちゃんを制して。

今度は逆に、私からぎゅうっと抱きついた。


「…しょうがないなぁ。」

「え…?」

「許してあげるよ」


ホントはそこまで怒ってなかったんだけど。

そういうことにしておこう。


こういう龍ちゃんも、たまにはいいよね。


「じゃあ、明日は“特訓”だね」

「へ?」

「お掃除!」

「だって、今日やったんじゃ…」

「リビングとキッチン“だけ”ね。あと、玄関と廊下と洗面所と…それからお風呂も!気になるところはまだまだたくさんあるから」

「え゛っ…」


“主婦”をあなどってもらっちゃ困るなぁ。

こう見えて、私はちゃんとこなしてるんだよ?


「そういうことで…」


今日は、もう寝よう?



1週間ぶりの、龍ちゃんの腕の中。

温もりも匂いも、感触も。

全部があったかくて、すごく安心する…



今日はいい夢が見られそうだ…。



「おやすみ、龍ちゃん」



私はゆっくりと瞼を閉じた――のに、


















「……きゃっ、な…?」



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