誘惑HONEY
サチ姉は、兄貴の嫁さん…つまり俺にとって“義姉さん”ってことになる。
兄貴とは学生結婚だったし“幼なじみ”でもあるから、だいぶ長いつき合いになるわけで。
子供の頃から知られてるもんだから…俺は未だに頭が上がらないんだよなぁ。
ある意味、お袋よりも怖い存在かもしれない。
そんなサチ姉は、この学校で数学教師をやっていて。
担当教官ではないものの、俺はこうして日々監視されている。
「…どう?実習のほうは。」
自分用のコーヒーに口を付けながら、俺の向かいの椅子に腰を下ろすサチ姉。
「まぁ、ボチボチ…デス。」
「何、それ…」
作業を続けながら適当に答えると、呆れたようにため息をつかれてしまった。
「でも、石浜先生でよかったわよね。他の先生だったらアンタ、初日で追い返されてたわよ。」
しみじみと呟くサチ姉…って、今思いっきり公私混同したよな?何げに失礼だし。
普通は“アンタ”じゃなく“沢木先生”って呼ぶべきじゃないだろうか。
…まぁ、いいや。
「聞いてもいいデスカ?」
いい機会だから、ずっと気になっていたことを聞いてしまおう。
サチ姉にしか聞けないし。
「俺の担当決めたのって、誰?」