誘惑HONEY



ピタッと動きを止めて。

フリーズすること数秒後。


「……………はっ?」


ガバッと顔を上げて、龍ちゃんは私を見た。


「もう1回、ちゃんと言って?」

「何言って…」

「学校で言ってくれたでしょ?それを今、ちゃんと目を見て言ってほしいの。」

「はぁっ?」


驚いた龍ちゃんが離れた隙に、私も起き上がって乱れまくったパジャマを着直す。


「“愛してる”って言って、キスして抱きしめて。」

「なっ…」

「してくれないなら、つづきはしないっ」

「はぁっ?何だよ、それ」


プイッと顔を背けて、ついでに布団もかぶって。

私は龍ちゃんに背を向けた。



もう1回、聞きたいんだもん。


龍ちゃんのことだ。

普段の生活の中で言ってくれるとは思えない。


だったら、こういうときしかチャンスはないでしょ?


しかも、今日は長い“おあずけ”の後だしね。

言ってもらえる確率は、高い。



「おい、ナオっ」

「やーだ。」

「…今度。また今度言ってやるから!今日は…」

「ダーメ!」

「ナオ…」


そんな情けない声を出しても負けないんだからね。

絶対に言わせて見せる。



「早く言ってくれないと、眠っちゃうよ?」





――さぁ。

長い夜になりそうだ。








*End*



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