勘違いから始まった恋
──あれから本当に5分後ぴったりに俺の家にやってきたナツキだが、ぐだぐだと時間を過ごしている為俺は少し離れた所で携帯を弄っている。
ナツキの話によると恋愛相談らしい。
片や携帯を弄り、片やスナック菓子をバリバリと頬張り。
「……で、ナツキ」
「ハイ」
「相手はおと──」
「男に決まってんだろ!!」
俺の台詞を遮り当たり前の如く其の言葉を俺に向けて吐き出す。
まるで俺が間違っているとでも云うかのように。
俺の中での恋愛は男と女で成り立っているが、ナツキの場合は如何なる時も男と男で成り立っているらしく。
常識的には俺の方が正論な気がするというか正論に違いないのだが、ナツキの圧力に負け一瞬でもナツキの方が正論だと思ってしまった。
取り敢えず気を取り直して。
「どーゆー子なの」
「なんかふわふわしてて!!なにあの可愛い生き物ーって感じでさー、ほっぺクッソやわらけぇし、タカよりちっこいとかまじやべー!!」
ドカッ、と一発蹴りを入れてやりたかった。
やりたかったのだが、いつも通りと云うか何と云うか……呆気なく止められる。
何故蹴ろうとしたのか理由を問い質されればきっと何も答えられないだろう。
ただ、ただ何となく。
ただ何となくムカついたからとしか云いようがない。
「……でさぁー」
正直思った。
一体この話はいつまで続くのだろうかと。
あれ程喋ったにも関わらず未だ続きを話そうと身体を乗り出してくる。
「……うん」
「俺のことなっちゃん先輩って呼んでさ、やべー可愛い。何、なっちゃん先輩とかツボだろ?ハルトの弟だって聞いたけどもう俺や──」
続く言葉はおそらく“もう俺やばい”とか何とかだろう。
だが、其れよりも気になったワードが一つ。
「──は、ハルトの弟……?」
ナツキ、チヒロ、カケル同様にハルトも俺の大事な親友であり、世に云う“いつめん”と呼ばれる類である。
因みに俺たちの中でただ一人だけ勝ち組であり彼女というものがいる。
「そ。倉保リョウ」
否、確かにハルトの苗字は倉保だ。
ハルトの弟には逢ったことはないがナツキが嘘を云っているようにも見えない。
──だが、
「其れは……さすがにやばくね?」
「そーなんだよなー」
いくらナツキだからといっても、やはり親友の弟には手を出しづらい様子で。
というか出して良いのかどうかも危うい状態だとは思うが。
「──な、ハルトも呼んじゃう?」