勘違いから始まった恋
“やばくね?”とか云いつつも内心結構面白がっている俺は、ナツキの返事も聞かず、即座にハルトへと電話を繋げる。
ちょうど暇をしていたらしく二つ返事で来てくれることとなった訳で──
「──実はナツキがハルの弟好きみたいなんだけど、お兄ちゃんとしてはどー思うよ」
ハルトを目の前に、ナツキの恋愛事情を早くもカミングアウト。
勿論其の言葉にハルトは当たり前の如く口をだらしなくポカーンと開いた儘の状態で一時停止。
と云ってもそんな姿でさえも様になるぐらいのイケメンなのだが。
「うぇ!?って……リョウ、だよな」
一時停止の後は訳が分からないといった感じで我を忘れるかのようにオロオロと取り乱す。
いつもは何でもさらっとこなしてしまうハルトだが、取り乱した姿といったら可笑しいこの上ない。
こんなにも取り乱したハルトを見るのは年に数回有るか無いかと、本当に貴重なことで。
そんな事もあってかしっかりと瞳と脳裏に焼き付けていた。
気付けば静かになったハルトが、携帯を片手に何やら何処かへと電話を掛けようとしているらしい。
プルルルと電話独特の呼び出しコールが数秒続くと、
「──リョウ?」
まさかの弟君宛のモノだったと、ハルトから発せられた名前で今知る。
「ちょっと聞きたいけどさ、お前ナツキって奴と話した事あるか?」
『なっちゃ……!?』
微かではあるが電話の向こうからナツキの名を呼ぶ弟君の声が聞こえる。
しかし弟君の言葉を遮り、
「お前っ、女が好きだよな?」
“そのままでいろよ”と一方的に電話を終わらした。
弟君の返しがほとんど聞こえなかった為に俺が勝手に“一方的に”と決めつけているだけであって、実際はそうでもなかったりするのかもしれない。
……とまあ、正直どちらでも構わないが。
先程の電話で唯一分かったこと。
其れは、ハルトがブラコンということ。
そりゃまあ大切な弟だから道を外してほしくはないだろう。
そういう気持ちは分からなくもない。
「友達の恋を応援できないのかよ!!」
「まじで弟に手出すなよ!!」
ハルトの弟君に惚れているという当のナツキは、今のやり取りを見てはそうハルトに叫んでいる。
そしてハルトも同様、実の弟をナツキから守ろうと必死だ。
そう考えると、ナツキの恋は前途多難だな。
……否、そもそも相手が男という時点でそうなるか。