勘違いから始まった恋
「──パスパス!パス回せ!」
……うえ、何これ。
休みが明け、学校通いの一週間がまたもややってきた。
只今俺はというと体育の授業でありバスケの真っ最中なのだが、
「ちょ、押すなよッ」
皆の勢いというか迫力というか、まあ、兎に角色々凄いことになっていて。
何も出来ずただただ訳もなく押される一方。
男子校というのも理由の一つにあるのかもしれないが、何故だか体育になると急に張り切り出す生徒が続出する。
今回のチーム分けは俺、カケル、ナツキ。
対するはチヒロ、ハルト。
其れに+αという形で五人グループが構成されている。
特に勢いに乗っているのが馬鹿チヒロ。
暴れながらバスケをする奴など、生まれてこの方チヒロ以外に見たことがないと云うぐらいの暴れよう。
勉強に関しては度を超す程の馬鹿だが、スポーツであればほとんど出来てしまう。
末恐ろしい奴だ。
元バスケ部員なのだから少しぐらい手加減してくれても良いモノを。
「──よっしゃー!!」
スリーポイントまで決めてガッツポーズを惜しげもなく晒している。
「あーやだやだ。バスケとかやだ」
「ほんとほんと」
後ろの方で皆の勇姿を見ることが精一杯といった様子で、俺はチームメイトのカケルと共にグダっていた。
イケメンハルト様はやはりイケメンハルト様で、期待を裏切らず普通に上手い。
前を走るナツキは何故だかひょいひょいしている。
バスケが上手い人──ハルトなんかは特に尊敬する。
羨ましい。
……あ、バスケが上手い人でもチヒロは別。
あんな馬鹿を尊敬したところで何も特はしないだろう。
──……体育の授業も終わり、制服へと着替えも終わり。
「──俺、トイレ行ってから教室戻るから」
「じゃあ先教室行っとるからなー」
チヒロたちと一旦別れ、トイレがある場所へ向かう。
俺の身にあんなことが待ち受けているとも知らずに──
「──よし。トイレも済んだし、教室戻ろっかな」
手を洗いトイレを出ると、入り口付近で壁に凭れ掛かっている一人の男子生徒の姿。
どうしてこんな所にいるのだろうかと不思議に思ったが、胸の内に秘めた儘其の前を通る。
しかし、
「──あ、タカ!」
不意に声を掛けられる。