ヒカリへ
光の家は私の家の斜め後ろ。
光とは、生まれたときからずっと一緒だった。もう、家族みたいな感じだった。
小学六年の冬に、私と光には、誰にも話せない思い出がある。
それは突然の出来事で…
『俺、由奈が好き』
「…??」
その時の私にとって、光はただの幼馴染でしかなくて。
もちろん今だって、光はただの幼馴染なんだけど…
突然の告白にアタフタしていると、
『チュ』
優しい優しいキスだった。
私のファーストキスは光。
ゆっくり離れる唇に、わたしはただただ震えることしかできなかった。
思春期の私たち。
キスなんて、あり得なかった。
あの日から私と光は、一切言葉を交わさなくなった。
中学生になり、わたしは生徒会に学級委員に…と、まさに優等生の道一本で、光はと言うと、決して問題児だったわけではないけど、とにかく目立たない存在になっていった。
誰が見ても無関係そうで、対象的な私たちの間には、こういう誰も知らない過去があるのだ。