その一枚がくれたのは、勇気と恋でした
お互いが弁当を取り出し、昼食を取りながら様々なことを話し合った。

文化祭一週間前に私が演劇部に復帰してからは、彼は文化祭に出展するために写真を取り続ける毎日を送っている。

なかなかいい写真が撮れずに、撮っては首を捻り、撮っては首を捻りの繰り返しばかりだと、それでも嬉しそうに彼は話してくれた。

「見てくれる人に最高の一枚を撮りたい」その言葉が私が知っている彼らしくて、とても嬉しくなった。


「私も台詞が少なくてもしっかりと稽古して、その役と見てくれる人たちに失礼が無いようにしたいわ」


私は演劇部に復帰し、文化祭といえど今まで以上に稽古と役作りに没頭する毎日を送っていた。

彼には当日まで内緒にしているが、部長は私に結構な役をくれたのだ。

だから、この文化祭が私にとって高校生活最初で最後の本当の舞台と言ってもいい。


「へへ。

木ノ内さんの舞台、楽しみしているから」


屈託のない笑顔で発した言葉が、これ以上にないくらいの喜びを感じた。
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