その一枚がくれたのは、勇気と恋でした
「二時に部室に集合して最終チェックするから遅れないように。

じゃあ、各自それまで文化祭を満喫しましょう」


部長の言葉でみんな部室を出て、それぞれが目的の場所へと向かっていった。

オオトリになり舞台まで時間はあるが、私は台詞のチェックや舞台への思いを集中するために部室に残った。


「涼子、模擬店とか周らないの」


みんなを見届けたあと、部長は私のほうを心配そうに見た。


「うん、和中君とは舞台が終わってから展示を見に行くって約束しているから」


「そっか···

ごめんね、オオトリなんか引いちゃって」


「いいよ。

私たちの最後の舞台だから、みんなに注目されて良かったじゃん」


彼女の表情にようやく笑みが戻り、お互いが口の前に右手を当てて小さく笑った。


「涼子、すっきりしたね」


「うん、ありがとう」


「じゃあ、模擬店でなんか買って昼休みに持ってくるよ。

だから、昼までは申し訳ないけど部室の留守番ってことでよろしく」


顔の前で両手の手のひらを合わせて片方の目を閉じて謝る彼女を、小さく手を振り見送った。
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