その一枚がくれたのは、勇気と恋でした
「あのさ、何か考え事?」


いつも通りに振る舞っていたつもりだったが、彼は私の変化に気付いてしまったらしい。

その言葉に少しだけ驚き、視線を彼から窓の外へと変えた。

夕日が美しく映え、その美しさが今の私の心情とまるで違い、少しだけ涙が出てきそうになる。


「和中君は文化祭・・・」


「えっ」


窓から外の風が吹きつけ、その風の気持ち良さについつい口を止めてしまった。

途中で止めてしまったこともあり、何だかこそばゆいような感覚が全身を覆い下を向く。

上目遣いで彼を見ると彼も下を向いていて、風の音だけが部室に流れていた。


「文化祭の準備に一生懸命だね」


自分の気持ちを気付かれたくなくて、うっすらと笑みを浮かべて下を向き続けた。
< 5 / 32 >

この作品をシェア

pagetop