その一枚がくれたのは、勇気と恋でした
そう言い、彼はその場にあった写真を愛おしそうに見つめ、そしてその束を両手に持った。


「この写真たちさ、木ノ内さんには自慢げに話してきたけど、コンクールに出展してもほとんど賞は取れないし、取っても小さい賞ばかり。

他にもまだまだたくさん撮ったやつはあるよ。

だけど、どれも同じような評価。

でも、俺は写真を撮るのが好きだから、この気持ちに嘘はつきたくないし、つけないよ。

だから、俺は写真を撮ることを辞めないんだと思う」


その瞬間、両手に持たれていた写真たちは彼の頭上に高く舞い上がり、そのまま勢いに任せて彼は床に寝ころんだ。

寝ころび、振ってくる写真を見つめる彼の表情は今までで一番笑顔が輝いていて、一番優しいものだった。


「あのとき、教室で俺の写真から好きということが伝わるって言ってくれたよね。

俺、今の木ノ内さんから凄く演劇が好きって伝わってくるよ」


ずっと我慢していたものが、遂に溢れてきてしまい思わず下を向いてしまう。

何かに対して好きという気持ちは、誰でもなく自分が一番分かっていることだった。

ただ、そのことで周りから生意気だとか、そんな風に思われることが怖くて、私はそれを口にすることができなかった。
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