海の街へ奇跡を
「お姉ちゃん!」
「葵(あおい)、元気にしてた?」
「当たり前! ほら、花純ちゃんの面倒もちやんとみれてたし」
小学生の弟の葵はわたしたちより1日先に、お母さんの妹一家と一緒にこの島へやって来ていた。
だから、弟を見るのは2日ぶり。
「しぃ、しぃおちゃん?」
葵の隣で小さな体でちょこんと座っている花純ちゃんがあどけない口調でわたしの名前を呼ぶ。
「そうだよ花純ちゃん。しおだよ」
「しぃおちゃん! しぃおちゃん!」
花純ちゃんはそういうと同時に、3歳とは思えないスピードで立ち上がり、わたしのところまで走ってきた。