海の街へ奇跡を
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「汐(しお)、着いたよ」
耳元から聞きなれた声がして、わたしは目を覚ました。
「早くして。やることはいっぱいあるんだから」
「うーん」
わたしを起こしたお母さんは、隣で荷物をせわしなくまとめていた。
仕方なく、わたしも自分の荷物をまとめ始めた。
「あー、気持ちよかった」
「汐が船で寝るなんて珍しいわね」
「昨日の夜は日付変わるまで課題してたの」
「へぇ。終わった?」
「まだ半分も終わってない」