海の街へ奇跡を
まだ少し波で揺れている船の中で、お母さんは苦笑いしている。
そんなこんなでしたちはにも荷物をまとめ終え、船からおりた。
「お父さんは?」
「おっきい荷物もって先行ってる。汐、これ渡してきて」
船の乗務員に荷物下ろしを手伝ってもらいながら、お母さんはわたしに手を差し伸べた。
手のひらにのったのは、2枚の切符。
数年前までは『小人』の切符が混ざっていたのに、もうそれはわたしに必要ない。
わたしは『大人』と書かれた2枚のそれを、風で吹き飛ばされないように軽く握り締めた。