海の街へ奇跡を
「あれ? なんかここ新しくなった?」
「ほんとだ。斎藤さんち」
「あのおばちゃんでしょ、よく道に水まいてる」
「そうそう」
船おりばの桟橋から歩いて5分ほど。
太陽が強く照りつく道を、わたしとお母さんはひたすら歩いた。
家の集まる密集地の細い道を歩いて、ゆるやかな坂をのぼって、木が生い茂る小道を抜けるとの目の前に急な坂道が現れる。
「汐、こっちもって」
お母さんがお土産を入れた紙袋をわたしに手渡した。
わたしがそれを受け取ると、お母さんは影一つない急な坂道を歩き出した。