海の街へ奇跡を
「こーんにちはー」
横開きのドアを開くと、冷たい空気が玄関から外へ流れてきた。
後ろから「あっ、涼しい」とお母さんがつぶやく声がきこえる。
冷たい空気が漂う玄関に足を踏み入れて、はいていたサンダルを脱いだ。
「汐、拝むの忘れないでね」
「わかってるー」
お母さんは無言でわたしに荷物を差し出す。
持っていけ、って合図。
――わたしだって荷物もってるんだけどな。
そう思いつつ、無言で荷物を受け取ったわたしは奥の部屋へ向かった。