海の街へ奇跡を
扉を開けてリビングに入ると、もっと涼しい空気が体を包んだ。
今まで火照っていた体が、一瞬で冷やされる。
「汐」
涼しさで思考回路が停止していたのか、名前を呼ばれてハッとした。
「おばあちゃん、こんにちは」
「よく来てくれたね」
リビングの中央にある薄黄緑のソファに座っていたのは、久しぶりに見るおばあちゃんだった。
隣に杖を置き、右手を太ももの上に静かに置いていた。
「暑かったでしょ、ちょっと休み――――」
おばあちゃんが言いかけたそのときだった。