円卓の愚者ども
部屋の中央にある、大理石のテーブル。そこに5つ、銀色の「鍵」が並べてある。

親指ほどの小さな鍵。

「わたし、これー。」

「じゃあ俺これね。」

次々と鍵を取っていく。
5人は笑顔で、ただゲームを楽しむかのよう鍵を手に入れた。

「制限時間は1時間です。ゲームスタート。」

最初に動いたのは白旗だった。
ものすごい勢いで、真紅の絨毯が敷いてある階段を駆け上がる。
その後に続き、ハイエナのような目をした斉藤が2階へ走る。

「辻井さん。」

明美がが不安そうな顔で、薫に声をかけた。

明美ちゃんがなにを言いたいのか、言われなくてもわかった。

「いこっか。」

俺の一言で、明美ちゃんは笑顔に戻った。俺には明美ちゃんを守る使命がある。

2人は1階から捜索を始めることにした。
まずは、キッチン。

店でも開けるんじゃないかと思うぐらい広い厨房、棚には無数の食材。綺麗に整頓された食器。

ここにあるのだろうか。とにかく探すしかない。

「明美ちゃんそっち探して、俺ここ探すから。」

ガチャガチャ、ガチャ

無数の食器が捜索の邪魔をする。映画でしかみたことがない大きい皿。何万もしそうな細工がされたカップ。

ガチャガチャ

ない。ない。ない。「箱」がない。
10億がない。

10分ぐらいたっただろうか、薫は答えがわかっている、馬鹿な質問する。

「明美ちゃん、箱あった?」

「ないです。」

残り時間、50分。
2人はキッチンを後にした。
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