円卓の愚者ども
残る「箱」はあと4つ。
いや、もう誰かが俺の箱を見つけているかもしれない。

2人は一つの部屋にたどり着いた。子供部屋。

ピンクを基調としたかわいらしい壁紙。お姫様がお休みになられるようなフリフリのベッド。不気味なフランス人形。この部屋に住んでたのだろうか、満面の笑みでこちらを見る女の子の肖像画。

「明美ちゃん、ベッドの方探して。俺、窓側探すから。」

さっきと同じ要領で探すことにした。

バサッバサッ

カーテンの裏、アンティークの洋服箪笥の下、絵本棚をくまなく探した。
気がついたら部屋は滅茶苦茶に散らかっていた。

ない。ない。ない。10億がない。

時間だけが過ぎていく。
ここにもないかと、あきらめかけていたその時。

「あった!」

明美が少女のような声で叫ぶ。
なに?!あった?!薫は急いで明美のもとへ駆け寄った。

「ほら!これ!」

少女の掌に、ソレはあった。薫が隠し持っているのと同じ「箱」。10億の「箱」。
2人はこの上なく喜んだ。さっそく合わせてみよう。震える手で、まずは明美が挑戦する。

カチカチカチ

「だめかー。」

明美の落胆した表情を見て、薫は不適な笑みを浮かべる。チャンス。
奪うようにして箱を手に取る。必要以上に手に力が入る。10億が、10億が目の前にある。

カチカチカチ・・・・・・・カチャ。

「あいたああああああああああああああ!!!!」

やった、やったぞ。10億は俺のものだ!すべてが手にはいる。俺の人生が保障された。
「箱」の中には「X」と書かれた一枚の羊皮紙。

「明美ちゃん、ごめん。」
そういい残した勇者は、その紙を手に一目散にリビングへ走りはじめた。
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