小悪魔な彼
だからその笑顔は反則だ。
つい心がゆらゆらとしてしまう。
「お待たせしました」
絶妙なタイミングで、店員さんが料理を持ってきて、颯太の視線は中断された。
ヤバイな…。
どんどん颯太のペースにのまれてる……。
あたしは自分にブレーキをかけながら、目の前の料理を口に運び続けた。
「はぁ…おいしかった」
夕ご飯はあっという間に終わり、お腹ごなしにぷらぷらと歩く。
あたしと颯太の距離は、50cmほど空いていた。
「香澄先輩って、意外と食べるんですね」
「いまさらー?だって、おいしいものならいくらでも食べられるでしょ」
「いったい、どこに入ってるんですか」
「お腹。こう見えて、結構お腹が……」
「ちょっと見せてください」
「って、調子に乗らないっ!」
そんな冗談を交えて、くすくすと笑い声が響く。
この空気が心地よかった。