小悪魔な彼
少しずつ距離を縮め、あたしの髪に触れる颯太の手。
自分の心臓が、颯太との距離が近くなればなるほど、速度を増していく。
「な、何っ……?」
「いいから動くな」
「…っ」
そんないきなり、命令口調なんて卑怯だ。
めったに聞かないその言葉に、思わず何も言えなくなる。
あたしは近づいてくる颯太に堪えられなくなり、目をぎゅっとつぶった。
もうどうにでもなれっ……
「……はい。大丈夫です」
「………へ?」
急に解放された頭。
目を開けると、颯太はすでにあたしから一歩後ろに下がっていた。
「先輩の頭に、木の葉がついてたんです」
そう言って、今とったばかりの葉っぱを、ぴらぴらさせながらあたしに見せてきた。