小悪魔な彼
目の前を車が横切って怖かった。
だけど……
今、ドキドキと大きく高鳴っているこの心臓は
颯太に抱き寄せられたことから起こっていることと……
(香澄っ!!)
あの時、呼び捨てで呼ばれたことからのドキドキだ……。
「あ、すみません」
颯太はあたしの体から離れる。
途端に自由になった体。
だけどどうして、こんなにも物足りないんだろう……。
「香澄先輩?」
「ごめん、颯太っ……。
今日は先に帰るねっ」
「先輩っ!!」
あたしは耐えられず、颯太のもとから走り去った。