小悪魔な彼
 
「お迎え、ありがとう」
「いえ、こちらこそ遅れちゃって……」
「女子に迫られてたんでしょ?」
「……」


否定なし。
冗談で言ったつもりなのに、どうやら図星だったようだ。


そりゃ、今日はクリスマスイブ。
ダメ元でも、誘う子は多いだろう。


「あ……怒ってます?」
「べつに」


怒ってるつもりはない。
だけど勝手に、心がモヤモヤする。


「誰の誘いも受けるつもりはないですよ。
 俺には香澄がいるんだから」

「……」


ずるい…そんなこと言うのは。

モヤモヤしていたはずが、たったその一言で晴れていく。


「どっかに行ったら、死刑なんだから」
「じゃあ、一生それを受けることはないですね」


結局、颯太に勝つ気配もなく、あたしは手を引かれ教室を出た。
  
< 171 / 416 >

この作品をシェア

pagetop