小悪魔な彼
「お迎え、ありがとう」
「いえ、こちらこそ遅れちゃって……」
「女子に迫られてたんでしょ?」
「……」
否定なし。
冗談で言ったつもりなのに、どうやら図星だったようだ。
そりゃ、今日はクリスマスイブ。
ダメ元でも、誘う子は多いだろう。
「あ……怒ってます?」
「べつに」
怒ってるつもりはない。
だけど勝手に、心がモヤモヤする。
「誰の誘いも受けるつもりはないですよ。
俺には香澄がいるんだから」
「……」
ずるい…そんなこと言うのは。
モヤモヤしていたはずが、たったその一言で晴れていく。
「どっかに行ったら、死刑なんだから」
「じゃあ、一生それを受けることはないですね」
結局、颯太に勝つ気配もなく、あたしは手を引かれ教室を出た。