小悪魔な彼
「そんなの決まってんじゃん」
猛にぃは上着を脱ぐと、あたしの元まで来た。
「な、なに……?」
「お前をもらいに」
「!!」
顔を近づけ、にやっと笑う猛にぃ。
不覚にも、一瞬ドキッとしてしまった。
「ふ、ふざけないで!!」
「猛ー。あんまからかうなよ。
こいつ、彼氏できたばっかで、ほかの男を過剰に拒むから」
「ははっ、わりぃわりぃ」
猛にぃはあたしから離れると、何事もなかったかのように再び口を開いた。
「言うなれば、修行」
「はい?」
全然意味が分からない。
「香澄。一応こいつ、料理人目指してんだよ」
「料理人……?猛にぃが?」
あまりにも似合わな過ぎて、つい聞き返してしまった。