小悪魔な彼
「なんだよ、その信じられないと言ったような顔は……。
高校卒業して、ずっと見習いとして店手伝ってんの。
んで、今回こっちに店舗を出すって言うから、俺はこっちで勉強するため、戻ってきたってわけ」
「ほんと、すごいわよねー。
もう立派に働いているんだから」
お母さんが、お茶を持ってリビングに入ってきた。
あたしの分まで用意されてる。
「そんなことないっすよ。まだまだ見習いの分際ですし」
「夢を実現させようとするのって、素敵よー。
ねぇ、香澄」
「え?……まあ、ね」
確かに、それはカッコいいことだ。
正直、猛にぃがそんなことをする人だとは思ってなかったから、拍子抜けの気持ちのほうが大きい。