小悪魔な彼
 
「颯太……絶対にやっぱり経験踏んでる……」
「俺のは、生まれ持っての才能です」
「……」


言い返す言葉も見つからなかった。


「じゃあ、本当にそろそろ帰らないと」
「そうですね。
 今日はありがとうございました」
「ううん!あたしこそ、楽しかったよ」


別れの言葉を言うのはさみしい。

けど、あたしたちの場合、きっとエンドレスだ。


なんとか寂しさを振り切って、改札を出ようとした。

だけど顔を上げた先にいる人物を見て、思わず固まった。


「な…んで……」
「どうしたんですか?」


改札を出ようとしないあたしに、颯太が不思議がって寄ってきた。

あたしはそこにいる人物の名前を口に出す。



「猛……にぃ……」

「え?」



そこには、昨日と同じ位置で立ち尽くす猛にぃの姿があった。
 
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