小悪魔な彼
 
「ごめんね、なんか付き合わせちゃって」
「いえ。香澄の昔馴染みの子に会えて、嬉しかったですよ」


申し訳ない気持ちで謝ると、にっこりとほほ笑んで返す颯太。

ちょっとだけ、心の中がもやっとする。


「もしかして……葵ちゃんのこと、可愛いと思った?」
「はい?」


女のあたしから見ても、今の葵ちゃんは可愛い。
だから颯太の目から見ても……


「香澄はほんと、いちいち可愛い」
「ちょっ……」


じーっと見つめるあたしを、颯太は抱き寄せた。


「俺は、香澄しか可愛いと思いません」
「……ほんとに?」
「ええ」


それがたとえ、口先だけでもよかった。

それだけで充分、安心できるから。


「ならよし」
「キスでもしましょうか?」
「だ、大丈夫!」


さっきの柱の陰とは大違い。

こんな場所でのキスは、さすがに無理だ。
 
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