小悪魔な彼
 
   ***


「いいなー。香澄ちゃん、あんな素敵な彼氏がいて」
「お前の、もろタイプな顔してたもんな」


猛と葵が、さっき会った香澄たちの話をしている。


「あたしなんて、彼氏と別れたばっかで落ち込み気味だよー」
「……じゃあ、奪っちまえばいいじゃん」
「え?」


猛の、ありえない言葉に葵が顔を上げる。


「昔、好きだったコ、香澄に奪われたことあるんだろ?」
「……」


それはまだ、引っ越す前の話。
奪われたといっても、香澄はべつにその子のことはなんとも思っていなかったから、何もしていないも同然。
だけど、好きな人が、自分の友達を好きでいるのは、面白いことじゃない。
  
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