小悪魔な彼
「ありがとう!ありがとう、香澄ちゃん!!」
葵ちゃんは、あたしの手をとって、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。
颯太はあたしを恨めしそうに見る。
目で「ごめん」と訴えながら見返すと、あからさまにため息をついていた。
「じゃあ、あたしたち、先に行くね!」
「あ、うん」
バイバイと手を振って、颯太とともに迷路の中へ入っていく。
正直、颯太のことはあまり心配してない。
どちらかというと、あたしの気が重いのは……
「じゃあ、行くか」
「……」
今、隣にいる、猛にぃのほうだ。
「べ、べつにうちらは、入らなくてもいいんじゃ……」
「アホか。ここまで来て入んねぇとかないだろ」
「……はい」
相変わらず、口が悪い。
あたしはしぶしぶ、猛にぃとともに迷路の中へ入った。