小悪魔な彼
 
猛にぃたちが引っ越す日、見送りに行った。

あたしは、葵ちゃんとの別れが寂しかったから。


だけど猛にぃに腕を引かれ、一方的に押し付けられた言葉。


「あ……あたしはそんなの、承諾したつもりはないっ」

「へー?ってことは、覚えてんだ?」


あたしの反応を見て、猛にぃは満足そうに笑う。

昔から、その笑顔が嫌だ。


「だ、だいたいっ……なんであたしが、猛にぃの物になんなくちゃいけないの?
 猛にぃなら、ほかにもたくさん女の子が寄ってくるでしょ?」


猛にぃは、確かにあたしにとっては恐怖の存在だ。

だけど他人から見れば、きっと猛にぃは男らしくて綺麗な顔をしている。


「まあな。
 だてに19年間生きてねぇよ。
 お前の男よりも、十分満足させられると思うぜ?」

「なっ……」


颯太を出されて、カッと熱くなった。


颯太と猛にぃを一緒になんかしてほしくない。
 
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