小悪魔な彼
「もしかして、ずっと走り回ってた?」
「ええ。香澄がこの中で、絶対に不安になってると思ったので……。
そしたら、壁の向こうで香澄の気配を感じたから……思わず、壁を乗り越えちゃいました」
「……っ……颯太っ」
あたしはたまらず、颯太に抱き着いた。
「……あり…がとうっ……
会いたかったよぉっ……」
「よしよし……。
香澄は意外と、さみしがり屋なところがありますからね」
なだめるように、片手であたしを抱きとめながら、もう片方で頭をなでる。
その温もりが、死ぬほど安心した。