小悪魔な彼
 
「あたしは……そんな理想なんて最初からない。
 颯太くんを一目見たときから、好きになるかもって予感してたの。
 だけど香澄ちゃんの彼氏だから抑えなくちゃって……。

 でもそんなふうに香澄ちゃんが言うんなら、あたしは引けないよ!」


目をうるませて、颯太くんに迫った。


たいていの男なら、これくらいで落ちる。
どんなに彼女がいる男でも、少しでも心当たりがあるような不安を掻き立て、そこに付け込んであたしが迫れば……


「……」

「そ、颯太くんっ……」


颯太くんは、あたしの両肩を掴んだ。
 
< 285 / 416 >

この作品をシェア

pagetop