小悪魔な彼

「なん…で……」
「なんで、じゃねぇよ。
 人んちで勝手に寝てよぉ」
「え……」


あたりを見渡した。

そこは見慣れない光景で、自分がどうしてこんなところにいるのか分かるまで、時間がかかった。


「あ、葵ちゃんはっ?」
「いない」
「え?」


(猛が帰ってくる前に、起こしてあげるから)


そう言って、あたしを休ませてくれた。


なのに、猛にぃが帰ってくる前に、姿を消したって言うの?


「お前、誘ってんの?」
「ちがっ……」


慌てて起き上がろうとしたけど、それを猛にぃに取り押さえられた。

半分起き上がったあたしの体が、再びベッドの上へと押し付けられる。
 
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