小悪魔な彼
 
「そ、んなの……困るよっ……
 あたしにとって猛にぃは……」

「怯える対象、だろ?」

「……」


分かってるように、苦笑する猛にぃ。

今さら、そんなふうに優しくするのは卑怯だ。


「本当はよ、部屋で寝ているお前を見て、襲ってやろうと思った。
 無理やりにでも抱いちまおうって……。

 だけど目を開けたお前を見たら、そんなこと出来なかった。


 そんなことが出来たら……
 10年以上も片想いしてねーよ」


苦しかった。

切なかった。


猛にぃが、ただの恐怖の対象の人のほうがずっとよかった。


そうだったら、今こんなにも胸が苦しくなんかなってないのに……。
 
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