小悪魔な彼
颯太の頬に手をあて、顔を見つめる。
ゆらゆらと颯太の瞳が揺れていた。
「……不安…なんです」
「何が?」
初めて言葉にされた、颯太からの弱音。
あたしは、颯太からの次の言葉を待った。
「香澄がどこか行ってしまいそうで……。
どんなに俺があなたを好きでも、それをすり抜けていなくなってしまいそうだ」
「颯太……」
いきなり、どうしてそんなことを思ったのだろう。
いつも強気で、強引で、簡単にあたしの心をもっていったというのに……。
だけど今は、理由よりも颯太のその不安を取り除いてあげたくて、あたしは両手で颯太の頬をとらえた。
「あたしはこの先もずっと……
颯太のことが大好きだよ」
背伸びをして、颯太の唇に自分のを重ねた。