小悪魔な彼
 
   ***


「あー、ムカつく!!」


香澄が去ってしばらくすると、ドアをバンと開けてズカズカと葵が帰ってきた。

見るからに、不機嫌なのが分かる。


「颯太のやつ、あたしのことバカにしてっ……」
「へー。落とせなかったんだ?」
「うるさいっ」


どうやら、葵の色仕掛けは、颯太には通用しなかったらしい。

まあ、あれくらいの男前なら、散々可愛い女の子には迫られていただろうから、簡単にはいかねぇよな。


「それよりも、猛はどうだったの?
 ちゃんと香澄ちゃんのこと、奪ってくれた?」

「んー、フラれた」

「はあ?」


俺の言葉を聞いて、さらに声を上げる葵。
正直うるさい。


「何やってんの、バカ兄貴!
 ってか、何正攻法でいってるわけ?」

「実の兄に向かって、バカ言うな。
 俺はお前と違って、頭が利くんだよ」

「何それ」


ギャーギャー騒ぐ葵に、冷静になりながら言葉を続けた。
 
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