小悪魔な彼
 
「大丈夫か?
 お前、いまにも人に飲まれそうだったぞ」
「あ、……うん」


一瞬警戒してしまったが、猛にぃはあたしを助け出そうとしてくれただけみたい。

いい加減、もう昔みたいな思いを抱くのはやめなくちゃ。


「それにしてもすげぇな。人」
「うん……。颯太と葵ちゃん、大丈夫かな……」
「大丈夫だろ。大人なんだから」


あたしとは違って、あっけらかんとしている猛にぃ。

まるで、この前あたしに告白したのが、嘘のようだった。
 

「たぶん、あっちの模擬店のほうにいるんじゃね?」
「そうかな」


列の隣には、ここぞとばかりに出店する屋台。

確かに、さっき颯太とも、お参りが済んだら屋台で何か食べようね、と話していた。
 
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