小悪魔な彼
「携帯に……」
「あ、葵」
「え?」
鞄から携帯を出そうと思ったら、猛にぃが葵ちゃんを見つけたらしい。
あたしは一度触れた携帯を、再び鞄にしまい、猛にぃと一緒にそっちの方向に行った。
模擬店をさらに奥に進んだ場所。
人気もほとんどないところだった。
本当にこんなところに、葵ちゃんがいたのだろうか……。
だんだん疑惑が浮かんできたと同時に、猛にぃの足が止まった。
「猛にぃ?」
「……戻ろう」
「え?」
向こうに視線を送っていたのに、引き返そうと言い出す。
そんなふうに言われたら、余計に気になってしまう。