小悪魔な彼
 
不思議と、警戒心はなかった。

この間の猛にぃの言葉があったから。


(そんなことが出来たら……
 10年以上も片想いしてねーよ)


きっと猛にぃは、無理強いでそういうことはしないと分かってるから……。


「涙拭け。鼻水も」
「……はい…」


ティッシュ箱ごと渡され、キッチンに消えた。

戻ってきたと思ったら、甘い香りを漂わせていた。


「ココア。飲むと落ち着くから」
「……ありがとう」


マグカップに注がれた、甘い香りが広がるココア。

ミルクティーばかり飲むあたしは、めったに飲むことはなかったけど……


「……おいしい…」


そのココアは、すごくおいしかった。
 
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