小悪魔な彼
 
「な、に言って……」
「とぼけないでください。
 俺、こう見えて、香澄先輩のちょっとした表情まで全部見てるんですから」
「……」


心まで見透かしてしまいそうな真っ直ぐな瞳。

つい目を逸らして、言葉に詰まってしまった。


だけど…
これはチャンスなんじゃないだろうか。

峰岸くんが、あたしを諦めるチャンス。

他に好きな人がいると分かれば、彼もあたしを諦めてくれるかもしれない。


あたしはうつむいていた顔をゆっくりと上げ、峰岸くんを見つめた。



「……そうだよ。
 あたしは三浦先生が好きなの」



あの日…
1年の時に受けた補習のあの夏から……


あたしは三浦先生しか見えない。
 
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