小悪魔な彼
19章 すれ違い
「香澄っ……」
「颯太……」
呼び出した、駅近くの公園。
一人ベンチに座って待っていると、慌てて颯太が駆けてきた。
「ごめんね、さっきは……」
「いえ。俺のほうこそ、ちゃんと香澄の手を掴んでいなかったから悪いんです」
決してあたしを責めない。
そんな颯太の優しさ。
だけど今は、どこまでそれを信じていいのか分からなかった。
「葵……ちゃんは?」
「葵ちゃん?現地で解散しましたけど」
「……そう」
それは、あたしが電話をかける前?
それともそれも嘘で、呼び出すまでずっと一緒にいたの?
嫌なことばかり、頭に浮かんでしまう。
「香澄、どうしたんですか?
何か言いたそうですけど」
「……」
俯き気味なあたしに、颯太は気づいていた。