小悪魔な彼
 
「つ、付き合ってないよっ」
「だよなー。お前、彼氏いるもんな」
「……」


彼氏……
もう…きっと彼氏じゃない。


「猛も不器用だからなー」
「……え?」
「小さい頃は、お前のことが好きで好きで仕方なくて、いっつも意地悪しか出来ないやつだったんだよな」


自分の部屋へ向かいながら、背を向けてお兄ちゃんが言う。


お兄ちゃんも、猛にぃの気持ち知ってたんだ……。


「もしも、今、お前への好意で来てるんだったら……
 あいつも素直になったってことだ。

 あんまり、宙ぶらりんなことしてないで、はっきりしてやれよ」


顔だけこっちを向いて、苦笑するお兄ちゃん。


あたしは何も答えられなかった。



猛にぃのことは、きっと今なら好きになれる。

ずっとずっと怖くて、恋愛対象になんかなれっこないって思ってたけど、今はもうその優しさに気づいているから……。


でもあたしは……。
 
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