小悪魔な彼

　
「おいしかったー！」


あんなに大盛りだったパスタ皿は、あっという間になくなってしまった。

サラダも、ドレッシングがおいしくて、次々と口の中に吸い込まれていくようだった。


「さすが猛にぃ、料理人だね」
「まあな」


照れもしないでそうやって答えるところが、猛にぃらしかった。


嘘がなくて、真っ直ぐで、きっと嫌味もない。


「腕だけじゃなく、お前への気持ちも入ってるからかもよ？」
「な……」


急に、柄にもないことを言われて、ちょっと焦った。

だって猛にぃは、そんなくさいセリフを言うような人じゃなかったから……。