小悪魔な彼
気が付けば、あたしは猛にぃの体をドンと押していた。
猛にぃの気持ちに、応えるつもりだった。
ちゃんと受け入れるつもりだった。
そのために、目を閉じたのに……
「まだ……ダメだよぉ……」
瞼の裏に映るのは、颯太だった。
目の前の視界を消せば消すほど、あたしの世界は颯太になる。
頭の中には…
心の中には颯太しかいないから。
「ご、めん………ごめんっ……」
「香澄!!」
あたしはそのまま、玄関を飛び出した。