小悪魔な彼
22章 選んだ人
もっともっと、ちゃんと考えればよかった。
颯太と葵ちゃんがキスした理由とか、
あんなにも偶然に決定的な瞬間だけ見たこととか、
今思い返せば、不自然なことだらけだ。
今ならわかる。
颯太がどうして、葵ちゃんにキスされた理由を話さなかったか……。
颯太は優しいから……
きっとあたしを傷つけないようにしようとして……
ドンッ……!!
「きゃっ……」
走って、曲がり角を曲がった時、ちょうど向かい側から来た人にぶつかってしまった。
弾みで自分の体が後ろへ下がったが、すぐに体勢を整える。
「すみま……ひゃっ」
謝ろうと顔を上げた瞬間、あたしの体は何かに包み込まれる。
それが今ぶつかった人に抱きしめられたんだと、すぐに分かったし、
視界はその人の肩にあって、誰かなんて顔は見えなかったけど……
「……そう…た…」
今、あたしを包み込んでいる人が、颯太だってことはすぐに分かった。