小悪魔な彼
神社の裏にまわって、石段に腰をかけた。
ここはあたしの、小さい頃の秘密の場所のもののようだった。
お母さんに怒られたり、猛にぃにいじめられたときは、決まってここに逃げ込んだ。
誰も知らない。
初めて、人を連れてきた。
「続き……聞きたい」
本当は、自分の話をするつもりで颯太に会いに行ったけど、颯太からもあたしに話したいことがあるようだ。
さっき、途中まで聞いたこともあり、あたしは続きを催促した。
「……ずっと、考えてた」
「……うん」
言葉を少し溜めて、ぽつりとつぶやく。
静かなこの場所では、その音量でも十分に聞こえた。
「猛さんは……俺よりもずっと年上で、夢をしっかり持ってそれに向かって突き進んで……。
頼りがいもあるし、経験も豊富だし……。
香澄が求めている人は、こういう人なんだって……。
だから俺が身を引けば、香澄は幸せになれるんだって……」
颯太は遠くを見つめ、あたしはそんな颯太の横顔をじっと見つめていた。