小悪魔な彼
「香澄先輩?」
「……」
「怒っちゃいました?」
「……」
そっぽを向かれた峰岸くんは、くすくすと笑いながら言ってくる。
そんなふうに笑われたら、絶対に振り向きたくない。
そう思っているのに、ガタっと椅子が動く音。
それとともに、あたしの肩にふわりと体温がかかった。
「怒らないでください」
「…っ」
耳元で、ささやく声。
息が耳にかかる。
「仕方がないじゃないですか。
俺は香澄先輩の年下というハンデがあるから……
香澄先輩をドキドキさせて、男だってことを意識させるしかないんです」
少しかすれた声。
甘いささやき。
思わず、少しだけ振り向いてしまうと、至近距離のまま峰岸くんと目が合った。