小悪魔な彼
5章 こんなに近くに…
「お、起きてたの!?」
「はい。ずっと目を閉じながら、香澄先輩のことを想ってました」
「……またそういうこと言う……」
照れもしないで、真顔で言う峰岸くんの言葉は、あたしを困らせてばかり。
いったい、この子の頭はどうなっているのだろうか……。
「ってか、待ってたの?
先に帰ってていいよ、って送ったのに……」
「そんなことで、帰るわけないじゃないですか。
俺と香澄先輩が恋人でいられるのは、もしかしたらあともう3週間しかないかもしれないんですよ。
だから、たった一日でも逃すわけにはいかないんです」
「……」
席を立ちあがって、あたしに鞄を渡す。
あたしは答える言葉が見つからなくて、鞄を受け取ると下へ俯いた。