小悪魔な彼

「香澄先輩っ!!」


逃げ出すあたしに、峰岸くんは教室から飛び出てくると、あたしを追ってきた。


「待ってくださいっ」


そう言われても、止まらない足。


だって、峰岸くんの顔を見た瞬間、思い出してしまった。



(報われないと思うからです)



三浦先生が好きだとあかしたとき、返ってきた言葉。


きっと峰岸くんは、最初から知っていたんだ。
三浦先生が、もうすぐ結婚するということを……。


「お…ってこないでっ……」
「嫌ですっ」


がむしゃらに走り続ける。

自分の教室じゃ、ゴールしちゃうから……。


だけど……



「香澄先輩っ……」

「はあっ…はあっ……」



結局あたしは、峰岸くんにつかまってしまった。
 
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